皆さんのご遺産は大丈夫ですか?
皆さんに1つお伺いしたいです。皆さんはご自身がどのくらいの遺産を相続するのかを把握されていますか?
把握されていない方、、、今すぐに把握したほうがいいです。皆さんのご両親やあるいは配偶者からどのくらい相続が発生するのかを把握されず突然亡くなられたりするとトラブルに発生して「裁判」「家族との絶縁」など取り返しが付かない事態に発展する可能性があります。
自分は大丈夫と思っている方が危険
「自分の家は大丈夫」と思っていませんか?まだ相続や遺産について把握されていないのであれば危険な可能性はあります。トラブルに発展してしまったご家族の中でも「まさか自分の家族がこんな形になるなんて、、、」と多くの方々が思っていたと思います。
今回の内容ではそんなまだ相続や遺産について把握されていない方向けに今すぐ把握したほうがいい理由や今すぐにしないとどんなトラブルが待っているのかについて解説していきます。
遺産分割協議の前に準備しておくこと
遺産分割協議を家族間で開始する前にまず準備だったり把握しておくことがいくつかあります。
ここが準備できていないまま遺産分割協議を始めても話が進まないし、場合によってはやり直しということもあるので、きちんと準備することを把握した上で遺産分割協議を行いましょう。
誰が遺産を相続するのか
まず遺産分割協議書を作成する前に色々と準備をする必要があります。
一番最初の準備は「法定相続人」探しです。法定相続人とは法律上で定められた相続人のことです。
例えばあなたが妻とお子さんがいるなら、法定相続人は妻と子供(複数お子さんがいるなら全員)になります。
この法定相続人がシンプルであればいいのですが、場合によっては遠縁の親戚まで相続が及ぶ場合もあれば、遺言書に内縁の妻へ相続する話が記載されていたり、家庭環境が複雑な場合はまず法定相続人を探すことが大変です。
法定相続人の範囲や定義・遺産の分配比率についてはこちらの記事に詳しく記載がありますので、ぜひ御覧ください。
法定相続人を全員集める
そして遺産分割協議書を作成する場として遺産分割協議をしますが、この協議には法定相続人「全員」がその場にいないと成立しません。仮に1人でも抜けていた場合は法律上不成立となります。
なので、一番最初に法定相続人を把握する必要があるのです。法定相続人を把握する方法は役所で戸籍を取り寄せて把握することが可能です。
遺言書を探す
そして遺産分割協議を行う前段階として「遺言書」の準備が必要となります。遺産分割協議は遺言書をベースに協議が行われます。
遺言書がないと話が進まないので、遺言書を探しましょう。遺言書がある場合は基本その通りに進みますが、ない場合は以前お伝えしたこちらの記事にある比率通りに遺産の分配が行われます。
被相続人は生前の内に遺言書の準備を
遺産の分割が遺産がある場合、ない場合でトラブルになるケースがあります。
それこそ今まで仲が良かった家族、親戚の関係が崩れてしまうことも。
トラブルをなるべく減らす唯一の方法は被相続人(相続をする方)が遺言書をきちんと残しておくことです。
遺言書は法的に有効な書類のため基本は遺言書の内容が効力を発揮します。
遺言書がなくても法定相続人に対する分配比率は決まっていますが、不動産をどう分割するかや遺言書で指定がないものに対しての処理というのは協議して決めなくてはいけません。
被相続人は残される家族のことを考えてしっかりとした準備が必要となるので、ぜひ生前に綿密な準備をしておきましょう。
遺産分割協議書の作成方法
これまでの解説からもおわかりかと思いますが遺産分割協議書というのは遺産分割の協議をする場で使用するものとなります。
遺産分割協議を執り行うまでの準備は前の章で解説したと思うので、ここからは遺産分割協議書をどのように作成するのかについて解説していきたいと思います。
作成期限
ちなみに遺産分割協議書の作成期限についてですが、特に作成期限はありません。
法的に期限は決まっていないですし故人が亡くなられて10年後とかに作成しても問題ありません。
しかし期限が無いからといってほったらかしにしておくと不動産の管理や預貯金の相続が進まないので、故人(被相続人)が亡くなられて半年以内には実施することを推奨します。
遺産分割協議書の書くべき項目
まずは書くべき項目についてです。遺産分割協議書は遺産分割協議で話し合われた内容を証書として残すためのものです。
なので、何を書くかは「どんな相続」「どんな遺産」があるのかによって変動してきます。
例えば預貯金、不動産(土地、戸建て、マンション)、保険、資産価値のある物など、これらが誰に相続されるかをきちんと記しておきます。
相続完了は遺産分割協議書を提出して名義変更するまで
なぜなら遺産分割協議書へ記して置かないと実際に相続をしても証券会社や保険会社は受け付けてくれません。
遺産分割協議書は協議が終わったらそれぞれ相続したものの対象管理会社(株であれば証券会社、土地であれば不動産会社)へ行き名義を変更する必要があります。
その際に遺産分割協議書の原本が必要となります。なので、書くべき内容を記して遺産分割協議書をきちんと作成しておく必要があります。
遺産分割協議書のひな形
これから書き方をお伝えしていきますが、その前にどんな内容を書いたらいいのかをイメージしていただくためにひな形を一度見てもらえればと思います。
遺産分割協議書サンプル
/遺産分割協議書(サンプル)
本 籍 神奈川県何横浜市南区弘明寺1丁目2番3号
最後の住所 埼玉県和光市白子1-1-1
被 相 続 人 千秋楽 太郎 (平成1年1月1日死亡)
上記の者の相続人全員は、被相続人の遺産について協議を行った結果、次の通り分割することに同意した。
1.相続人甲野花子は次の遺産を取得する。
【土地】
所 在 埼玉県和光市白子1丁目
地 番 1番1
地 目 宅地
地 積 300.00㎡
【建物】
所 在 和光市白子町1丁目
家屋番号 2番1
種 類 木造
構 造 瓦葺1階建
床 面 積 1階 69.33㎡
2階 59.25㎡
2.相続人百秋楽太郎は次の遺産を取得する。
【現金】 金10,000,000円
【預貯金】
終楽銀行千支店 普通預金 口座番号01234567
楽銀行終楽支店 定期預金 口座番号09876543
【株式】
○○株式会社 普通株式 100株
3.千秋楽 太郎は、第1項記載の遺産を取得する代償として、百秋楽太郎に平成3年1月1日 までに、金10,000,000円を支払う。
4.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人百秋楽太郎がこれを取得する。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を何通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。
平成1年2月3日
【相続人百終楽太郎の署名押印】
住所
氏名 実印/
相続人の人数や親族によって記載の内容は変わりますが、サンプル例として掲載しております。
土地や建物を相続する場合は、実際の面積や構造、所在地も含めて詳細に記載します。1つでも間違っていると再度作り直しになる場合があるので、ご注意が必要です。
また現金や株式などの資産についても厳密に記載をします。
そしてこちらのサンプルは相続人は1名ですが、複数名いる場合は「誰に何をどのくらい相続するのか」をこちらも具体的に記載をします。
遺産分割協議書の使い道について
これから書き方をお伝えしていきますが、その前にどんな内容を書いたらいいのかをイメージしていただくためにひな形を一度見てもらえればと思います。
遺産分割協議書が作成できたら次はそれを活用するシーンについてお伝えしていきます。遺産分割協議書は法的な書類なので、法的にそこに記載されている相続が施行されます。
なので遺産分割協議で決まった内容の相続を正式に移管することができます。これからその詳細についてお伝えしていきます。
不動産の名義変更
遺産分割協議書の活用の1つは不動産です。故人(被相続人)名義で所有していた不動産(山、戸建て、マンション、土地など)を法務局で名義変更(相続登記)する必要があります。
その際に遺産分割協議書の原本が必要となります。もちろん遺産分割協議書以外にも被相続人の戸籍謄本類、住民票の除票や相続人の住民票・相続人全員分の印鑑登録証明書などの多くの書類が必要となります。
書類を集めるのも大変で、申請するまでに時間がかかります。 もちろんご自身で対応が難しい場合は、司法書士などに依頼をすることもできるのでぜひ一度検討してみましょう。
また相続登記申請時に法務局で「法定相続情報証明書」を発行できる方はしておきましょう。
法定相続情報証明書は戸除籍謄本等の記載に基づく法定相続人を明らかにするものとして利用できるので、故人の預貯金や株の相続の際の名義変更に使うこともできます。
相続税の申告
続いては相続税についてです。遺産分割協議書の作成に期限はありませんとお伝えしましたが、遺産分割協議書を必要とした相続手続きには期限があるものがたくさんあります。
その一つが相続税です。
相続税の申告期限が「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」と定められています。
期限までに相続税の支払いがされないと、延滞金が発生する可能性があるので、遺産分割協議を故人(被相続人)が亡くなられて半年以内には実施してすぐに相続手続きを行えるようにしましょう
株式など金融資産の相続
不動産と同じく故人(被相続人)が保有する株式などの金融資産においても遺産分割協議書を使って名義変更が必要となります。
金融資産を相続するには基本証券会社の口座がひつようとなるので、お持ちでない方はまず口座開設を行う必要があります。
口座開設が完了したら、故人(被相続人)の口座から相続人の口座へと相続をした資産を預け入れます。
まずは証券会社へ問い合わせをして必要な書類や対応について確認をしてみましょう。
ここまでご紹介したのは上場企業に対しての対応となりますが、非上場株式の場合には証券口座を必要としない場合もあるので、一度株式発行会社へ問い合わせしてみて必要書類を確認しつつ名義変更を行いましょう。
遺産分割協議における注意点
これまで遺産分割協議書についての書き方や下準備について解説してきました。
最後にリスクを鑑みて色々な注意点について触れておこうかと思います。
遺産分割協議書の内容を守らないケース
遺産分割の協議においてトラブルがあった場合、遺産分割協議書の内容を守らない方もいらっしゃいます。当然ながら遺産分割協議書は法的な書類のため書かれたことは基本遵守されます。
なので、決めた内容を守らない場合は、調停、訴訟や強制執行を行う必要が発生します。
ちなみに訴訟や強制執行を行うのは時間もかかるしそもそもいきなりそんなことはできないので、かなり大変です。
当たり前ですが、理想は家族間できちんと話をして相続を行うことです。では特に遺産分割協議の中で守られない内容TOP3をご紹介します。
不動産の相続
よくあるケースとして不動産の相続(引き渡し)がされない場合があります。
シチュエーションとしては故人(被相続人)と一緒に住んでいた方と別の方にその不動産の相続が決まり、家を出ていかなければならない場合です。期日になっても出ていくどころか引っ越しの準備さえしていませんでした。
説得しても一向に家を空けてくれません。その場合、残念ながら強制執行というのはできません。
この場合は粘り強く交渉をする必要があります。
遺産分割協議がまだの場合は、裁判所で調停委員立ち会いのもと行われる遺産分割調停を申し立て、遺産分割協議を遺産分割調停調書で行ってみるというのも一つの手のようです。(つまり家族間だけの協議ではなく、第三者立ち会いのもと遺産・相続の協議をするということです)。
詳しくは弁護士などにまず相談してみたほうがよいでしょう。
代償金の支払い
こちらもよくあるケースですが、代償金の支払いです。
代償金とは故人(被相続人)の遺産を誰か一人が取得して他の法定相続人へ分配するお金のことです。
要はトラブルとしてみんなに分けるお金を独り占めするケースです。
こちらですが、遺産分割協議書を作成(条件として強制執行認諾文言付きの公正証書が必要)していれば、強制執行による手段を取ること自体は可能です。
しかし、これを事前にできればこのようなトラブルには発展せず、遺産分割協議自体も行っていないケースが多いようです。不動産同様にやはり法定相続人間での会話・交渉が要求されます。
ワーストケースとして紛争調整調停を申し立てるなどの手段をとることとなります。
またこの場合、調停前置主義が適用され、調停を経てからでないと訴訟を提起することができません。なので、まずは調停を申し立て順々に進めていくこととなります。
親の面倒をみない
これは遺産分割協議において、親を看病すると約束した代わりに他の相続人よりも多くの相続財産を相続することとしたにもかかわらず、親を面倒をみない場合です。
まずできることとしては該当する相続人に対して、親の生活費を請求することは可能です。しかしここまでトラブルに発展しているためそれさえも支払わない場合も考えられます。
支払わない場合には、別途扶養請求調停といった裁判所の手続きを取る必要があります。
そしてこのような手続きを経たとしても、あくまで金銭的な請求が認められるに留まり、親の面倒を見ること自体に強制執行をすることができないのが現状です。
まとめ
これまでご紹介した3つのトラブルはいずれもいきなり強制執行ができないことがほとんどです。
法定相続人間での粘り強い交渉が必要となります。トラブルに発展すると時間も体力も消費してしまいとても大変です。不安な方はなるべく早い段階で弁護士へ相談することをオススメします。
最後に:家族が集まるだけの会議ではなく法的な協議
遺産分割協議は家族が久しぶりに集まって昔話をする場でもなければ、遺産を巡って言い争う場でもありません。
故人(被相続人)が残した遺産をどう分配して誰が「責任」を持って相続するのかを決める場です。
遺産が有りすぎたり、逆に借金を背負っていたりするとトラブルに発展することが非常に多いですが、事前に相続人間で話ができるのであればして、難しいようであれば事前に取れる手段を弁護士と協議するなどしておくようにしましょう。